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ホームページ > 論文/書籍 > 法律考察 > 中国「インターネットにおける不正競争防止暫定規定」

中国「インターネットにおける不正競争防止暫定規定」

 2024-09-01555

中国不正競争防止法(2019年改正、以下「不競法」という)では、インターネットにおける不正競争行為(他人の商品との誤認・混同行為、ネットワークの妨害行為)が行政処罰の対象になることが定められている。しかし、どのような行為がインターネットにおける誤認・混同行為に該当するかについて具体的な規定はなく、法執行部門である国家市場監督管理総局(SAMR)も認定方法や処罰基準を統一していないことから、実務上は当局の裁量によって判断されることが多かった

かかる状況において、デジタル経済の継続的な発展を促進し、インターネット上の不正競争行為を防止するため、2024年5月6日、SAMRは「インターネットにおける不正競争防止暫定規定」(施行日は2024年9月1日、以下「暫定規定」という)を公表した1。暫定規定は全43条からなり、インターネットにおける誤認・混同行為、虚偽宣伝、ネットワーク妨害などの不正競争行為の認定基準を具体化している。

本稿では、暫定規定の主要ポイントを紹介する。なお、特に表記しない場合、引用条文は暫定規定の該当条文を指すものとする。

インターネットにおける標章の混同惹起行為

不競法6条3号及び同4号では、インターネットにおける以下の行為は誤認・混同行為であり、不正競争行為に該当するとされている。

1.他人の一定の影響力を有するドメイン名の主体部分、ウェブサイト名称、ウェブページなどの無断使用行為

2.人々に他人の商品であるとの誤認又は他人と特定の関係が存在するとの誤認を生じさせるのに十分なその他の混同行為

まず、1.との関係では、暫定規定は、以下のような行為がインターネット上の誤認・混同行為に該当すると規定し、不競法の内容を具体化した(第7条1項1号ないし4号)。

1)一定の影響力を有する他人のドメイン名の主体部分、ウェブサイト名称、ウェブページと同一又は類似する標章を無断で使用する行為

2)一定の影響力を有する他人の商品名、企業名(略称、屋号等を含む)、組織名称(略称等を含む)、氏名(ペンネーム、芸名、訳名等を含む)を、自己のインターネット上の自己の経営活動の標章として無断で使用する行為

3)一定の影響力を有する他人のアプリケーションソフトウェア、オンラインショップ、ミニプログラム、公式アカウント、ゲームインターフェース等のページデザイン、名称、アイコン、形状等と同一又は類似する標章を無断で使用する行為

4)一定の影響力を有する他人のインターネットにおける別称、記号、略称などを無断で使用する行為

暫定規定では、標章の無断使用行為について、同一の標章に限らず、類似する標章も対象となることを規定し、不正競争行為の適用対象が具体化されている。なお、最高人民法院による「不正競争防止法の適用に関する若干問題の解釈」(法釈【2022】9号)第12条1項では、誤認・混同行為における標章の同一性又は類似性の判断は、商標の同一又は類似に関する判断原則および方法を参照することができるとされている※2

次に、2.との関係では、「他人と特定の関係が存在すると誤認させる行為」には、一定の影響力を有する他人の標章を検索キーワードとして設定し、他社の商品又は他人との特定の関係があるものと誤認させるに足る場合、混同行為に該当する旨が定められている(第7条2項)。

インターネットにおける虚偽宣伝行為

不競法第8条では、事業者は、その商品の性能、機能、品質、販売状況、利用者の評価、受賞歴などについて、虚偽もしくは人々を誤解させる商業宣伝をしてはならず、又は消費者を騙き、誤導してはならない旨を規定している。

まず、暫定規定は、虚偽宣伝の方法として、以下の内容を定めている(第8条)。

1.ウェブサイト、ミニプログラム、公式アカウント等を通じて表示、デモンストレーション、説明、解説、推奨、又は文字で注釈を行うこと

2.ライブ配信、プラットフォームの推薦、ネットワーク文章等の方法を通じてマーケティング活動を実施すること

3.ホットサーチ、ホットコメント、ホットシェア、ランキング等の方法を通じてマーケティング活動を実施すること

4.その他の虚偽又は誤解を招く宣伝を行うこと

次に、商品生産経営主体および商品の販売状況、取引情報、経営データ、顧客の評価等について、以下のような行為を行う場合、虚偽宣伝に該当するとされている(第9条)。

1.虚偽取引、虚偽ランキング

2.取引額、成約数、予約数等経営に関連するデータ情報を捏造・流布すること

3.利用者の評価を捏造したり、誤解を招く表示方法を用いて低評価を隠したり、高評価を前面に出したり、低評価を後方に配置したり、異なる商品の評価を明確に区別しないこと

4.キャッシュバック、クーポン等の方法で、利用者に高評価、いいね、特定の投票等のインタラクティブな行為を誘導すること

5.お気に入り数、クリック数、フォロー数、いいね数、閲覧数、購読数、リポスト数等のデータを捏造・流布すること

6.進学率、試験合格率、就職率等の教育訓練効果を捏造・流布すること

なお、虚偽宣伝行為が、同時に虚偽広告行為に該当する場合、中国広告法の規定に従って処罰されることになる(不競法第20条第2項)。

■ネットワーク妨害行為

不競法第12条では、事業者は、技術的手段を利用し、利用者の選択に影響を及ぼすこと又はその他の方法を通じて、他の事業者が合法的に提供するネットワーク製品又はサービスの正常な運用を妨害し、破壊する行為をしてはならない旨が規定されている。

暫定規定は、インターネット、ビックデータ、アルゴリズム等の技術的手段を利用して、利用者の選択権を妨害する行為の態様を細かく規定しており、ネットワーク妨害行為に該当するか否かを判断する際の認定要素も詳細に定めている(第12条ないし第26条)。

おわりに

暫定規定は、インターネットにおける不正競争行為の幇助行為も規定するほか(第7条1項6号、第8条2項、第9条2項)、インターネット上の不正競争行為についての管轄、調査プロセス、法違反が生じた場合の罰則等も詳しく定めており、2022年11月に意見募集が行われた不正競争防止法改正草案の内容も一部反映されている。

デジタル経済が急速に発展する現代において、暫定規定は、インターネットにおける不正競争行為に対する判断基準を具体化するものとして注目に値する。今後は、暫定規定施行後の実務状況を引き続き注視する必要があるだろう。

 

※1https://www.samr.gov.cn/zw/zfxxgk/fdzdgknr/fgs/art/2024/art_80019fe59e464196bef173dc56678a42.html

2具体的には、「商標民事紛争案件の審理における法律適用の若干問題に関する解釈」(法釈【2002】32号、2021年1月1日改正施行)第9条と第10条が適用されることになる。すなわち、同解釈第10条では、商標の同一又は類似の判断原則として、①関連する公衆の一般的な注意力を基準とすること、②商標の全体を比較したうえ、その要部も比較しなければならず、比較対象を隔離した状態で個別に行わなければならないこと、③商標類否の判断は、保護を請求する登録商標の識別性及び知名度を考慮しなければならないことが挙げられている。また、同解釈第9条第2項では、「商標の類似」とは、被疑侵害商標と原告の登録商標を比較し、その文字の字形、発音、意味又は図形の構造及び色彩、又はその各要素を組み合わせた後の全体構造が類似であり、又はその立体形状、色彩の組合せが類似であり、容易に関連する公衆に商品の出所の誤認を生じさせ、又はその出所と原告の登録商標の商品に特定の関係があると認識させることをいうと定められている。



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