「上場企業監督管理条例(意見募集稿)」
上場企業の質向上と市場監督管理の強化を図るため、中国証券監督管理委員会は「会社法」「証券法」などの関連法律に基づき、「上場企業監督管理条例(意見募集稿)」(以下「意見募集稿」という)を起草し、2025年12月5日に発表した。
本意見募集稿は計8章74条で構成され、上場企業のコーポレートガバナンス、情報開示、M&A・再編、投資家保護、監督管理及び法的責任などに関する規制要件を含む。主な内容は以下の通りである。
一、取締役・監査役・役員の責任強化と会社内部統制要件
「意見募集稿」は、上場会社の取締役会、監査委員会及び独立取締役の職責と構成を詳細化し(例:監査委員会の過半数の委員は独立取締役でなければならない、第9条)、取締役・上級管理職の資格条件及び忠実義務・勤勉義務を強調している(第11条、第12条、第13条)。同時に、支配株主、実質支配者及び関連当事者の行為(違法な保証、同業競争等)に対して、より厳格な禁止規定と責任追及メカニズムを設けている(第20条、第21条)。日系企業が中国に上場企業を有する場合、または重要な株主である場合は、内部統制構造及び関連取引管理制度の再検討と改善が必要である。
二、情報開示監督の強化と財務不正の厳罰化
「意見募集稿」は、上場企業が財務会計報告の真実性・正確性・完全性を確保することを要求し(第30条)、監査委員会が財務情報審査において担う監督責任を明確化した(第31条・第33条)。同時に、上場会社の関連当事者、顧客、サプライヤー、コラボレーション側及びそのサービス提供機関等は、上場会社の財務不正に加担してはならず、違反した場合は高額な罰金に直面する可能性がある(第35条)。上場会社と取引のある日系企業も、自社が提供する書類資料の真実性及びコンプライアンスリスクに注意が必要である。
三、M&A再編行為の規範化、買収者の資格要件の明確化
「意見募集稿」は上場会社買収の定義(第41条)、買収者の資格条件(第43条)、持分変動開示基準(第44条)をさらに詳細化した。上場会社を買収してはならない複数の状況(重大な債務の存在、深刻な信用失墜、最近の処分状況など)を明確に列挙している。中国上場企業の買収または重大な資産再編への参加を計画する日本の投資家は、事前に自身のコンプライアンス状況を慎重に評価する必要がある。
四、違法行為に対する罰則強化
「意見募集稿」は専用の罰則条項を設け、資金流用、違法保証、虚偽報告への協力、株式譲渡制限違反などの行為に対し高額な罰金を規定するとともに、直接責任者の個人責任を追及できることを明確化した(第65条~第70条)。関連行政処罰情報は法令に基づき証券市場信用情報ファイルに組み込まれ、全国信用プラットフォームで共有される(第63条、第64条)。これは企業の評判や今後の経営に長期的な影響を及ぼす可能性がある。
五、越境適用
「意見募集稿」第73条は、海外企業が中国国内で株式発行・上場を行う場合、本条例が適用されると規定している。既に中国国内で上場している、または国内市場への復帰を計画している日本企業も、関連するコーポレートガバナンス、情報開示、M&A再編などの規定を遵守する必要がある。
以上を踏まえ、中国に上場企業を保有する、重要株主である、または上場企業とサプライチェーン協力関係にある日本企業及び関係者は、速やかに本条例草案の内容を精査し、コーポレートガバナンス、関連取引、情報開示、投資・M&A等の分野におけるコンプライアンス義務の変更及びリスクを評価することを推奨する。






