「海外投資家が配当利益を直接投資に回す際の税額控除政策に関する公告」
2017年12月29日、財政部、国家税務総局、国家発展改革委員会、商務部は「海外投資家が配当利益を直接投資に回す際の源泉徴収所得税暫定免除政策問題についての通知」(財税〔2017〕88号、2017年1月1日~2017年12月31日有効)を公布した。2018年9月29日、同部門は「海外投資家が配当利益を直接投資に回す際の源泉徴収所得税暫定免除政策の適用範囲を拡大することに関する通知」(財税〔2018〕102号、2018年1月1日施行)を公布した。上記通知では、配当利益をもって直接投資を行う海外投資家が負担すべき法人所得税(税率については、通常10%又はそれより低い協定税率であり、以下同様とする)は、一時的に課税されないこととされた。これにより、ある程度外資の発展が刺激された。
しかし、近年、国際的な直接投資(FDI)の流量及び流向は劇的な変化を遂げている。一部の国が貿易保護主義を推進し、一部の多国籍企業がグローバルサプライチェーンの構築において多角化を図るとともに、地政学的緊張状況が加わることで、国際的なFDIは大きな不確実性に直面している。このような背景の下、中国は外資の安定化及び高品質な投資の誘致という厳しい課題に直面している。外資の安定化、外資の信頼の強化及び企業の発展促進を図るため、2025年6月30日、中国財政部・国家税務総局・商務部は「海外投資家が配当利益を直接投資に回す際の税額控除政策に関する公告」(2025年第2号、2025年1月1日施行、以下「公告」という)を公布した。前述の通知を基礎として、本公告はさらに、2025年1月1日から2028年12月31日までの期間に、海外投資家が中国国内の居住者企業から得た配当利益を中国国内での直接投資に充てる場合、その投資額の10%を当該年度の課税対象額から控除できること、そして、当該年度中に控除しきれなかった額は、翌年以降に繰り越して控除することが認められることが明確にされた。また、中国政府と外国政府との間で締結された租税協定において、配当・利益等の権益性収益に適用される税率が10%を下回る場合には、その協定税率が適用される。
一、適用利益範囲:中国国内の居住者企業が海外投資家に対して実際に配分した留保利益によって形成された配当、紅利等の持分性投資収益に限られる(第2条第1項)。
二、国内直接投資の形態
l中国国内の居住者企業の払込資本金又は資本剰余金の新規増資又は転換。
l中国国内において新たに居住者企業を設立して投資すること。
l非関連当事者から中国国内の居住者企業の株式を取得すること。
l上場会社の株式の新規増資、転換又は取得(適格な戦略的投資を除く)は含まれない。
三、投資対象範囲:被投資企業(投資先企業)が携わる事業が「外国投資奨励類産業目録」に記載された全国レベルで推奨される外資導入産業に該当している(第2条第3項)。
四、投資期間要件:外国投資家の国内再投資は少なくとも5年(60カ月)保有されなければならない。(第2条第4項)。
五、支払方法の要件:利益配当企業の口座から被投資企業または株式譲渡先の口座に直接振り込まれること、又は利益配当企業から資産の所有権を被投資企業または株式譲渡先に直接譲渡されること(第2条第5項)。