「判決及び裁定の執行拒絶刑事事件の処理に関する若干問題の意見」
2024年12月1日より実施された「最高人民法院・最高人民検察院による判決及び裁定の執行拒絶刑事事件の処理における法律の適用に係る若干問題に関する解釈」(法釈[2024]第13号、以下「解釈」という)は、執行拒絶罪の「情状が重大である」との要件及び行為の時間的要件等を細分化して規定した。しかし、同解釈は執行拒絶罪の実体的事項についてのみ規定しており、手続きに関する規定は含まれていない。司法実務においては、依然として公安機関による告訴の受理拒否及び自訴提起の困難さという問題が存在している。
執行拒絶行為に対する刑事処罰を円滑に行うため、2025年6月10日、最高人民法院、最高人民検察院及び公安部は「判決及び裁定の執行拒絶刑事事件の処理に関する若干問題の意見」(同年7月1日より施行、以下「意見」という)を公布した。意見は全20条からなり、主な内容は次のとおりである。
一、執行拒絶罪の土地管轄の明確化
執行拒絶罪の土地管轄について、実務では公安機関が犯罪行為地を判断基準とし、管轄権がないとして告訴の受理を拒否するケースがあった。意見では、執行裁判所の所在地を土地管轄の判断基準と明確に定めており、これにより執行拒絶罪の管轄権に関する論争が根本的に解決される(第2条)。
二、執行拒絶罪の証拠資料の明確化
解釈では、執行拒絶罪の「情状が重大である」との要件は明確にされている(解釈第3条)。例えば、悪意で無償に財産権を処分したり虚偽の処分をしたり、履行能力に関する重要な証拠を隠匿するなどの情形が該当する。ただし、解釈では裁判所が公安機関に執行拒絶罪を移送する際に提出すべき資料が明確にされていなかった。告訴受理のための移送資料について、公安機関はしばしば資料が不十分であるとして告訴の受理を拒否する。意見では執行拒絶罪の証拠資料リストを明確にしており、これにより裁判所と公安機関による資料移送の完全性が大幅に規範化され、告訴受理の可能性が高まるだろう。具体的には、裁判所は①身分関連証拠、②執行義務又は執行協力義務を負うことの証拠、③執行能力があることの証拠、④執行を拒否する行為が存在することの証拠、⑤情状が重大であること又は結果を生じさせたことの証拠を提出する必要がある(第4条)。
三、執行拒絶罪の告訴受理に対する審査期間の明確化
意見公布前は、執行拒絶罪の告訴受理審査期間について、法律上の明確な規定がなかった。実務において、公安機関はしばしば告訴受理を延ばすことがあった。意見では、執行拒絶罪の告訴受理審査期間を7日間(事件が重大かつ難渋、複雑な場合は30日間)と明確に定めている(第5条)。
四、執行拒絶罪の自訴の実体的及び手続的規定の充実(第11条以下)
1.執行拒絶罪の自訴の構成要件を明確化。被害者が自訴を提起するには、①執行義務を負う者が判決・裁定の執行を拒否し、権利を侵害し、刑事責任を追及すべきであること、及び②かつて告発をしたが、公安機関が告訴を受理しなかったなどの事実を構成要件とする(第11条)。
2.自訴提起時の資料リストを明確化。具体的には、自訴状、身分関連資料、執行根拠、執行拒絶の証拠、公安機関又は検察院が処理しなかったことの証明など6種類の資料を含む。
3.証拠の支援等を強化。執行裁判所は自訴人に対し、既に収集した権利侵害を証明する証拠を提供する必要がある(第15条)