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製造業法務ノート02:RBA対抗措置が国際調達に与える影響

 2026-10-30

2026年8月5日、商務部は2026年第2号令を公布し、責任企業同盟(Responsible Business Alliance、以下「RBA」という)を含む米国の6つの団体・企業を対抗措置リストに指定し、中国国内の組織・個人が当該団体等と取引・協力その他の関連活動を行うことを禁止する旨を発表した。本措置は公布の日から施行される。


RBAは、世界の電子産業で最も広く活用されているサプライチェーン社会責任基準を定める団体であり、アップル、デル、インテル、マイクロソフト、テスラ、フィリップス、サムスンなどの著名な多国籍企業が会員となっている。RBAの「行動規範(Code of Conduct)」と「検証評価プログラム(Validated Assessment Program、以下「VAP」という)」は、多くの多国籍企業の買い手側が調達契約に書き込んでおり、サプライヤーが国際サプライチェーンに参入するための関門の一つとなっている。今回の対抗措置により遮断されるのは、RBAの中国国内における事業だけでなく、海外の買い手側が中国サプライヤーのコンプライアンス証明を取得する経路そのものである。以下、主な論点について整理する。


1. 今回の対抗措置の対象主体と対象行為

リストに指定された6つの団体・企業は、アプライドDNAサイエンシズ社(Applied DNA Sciences)、ストラタム・レザボア社(Stratum Reservoir)、アルタナ・テクノロジーズ社(Altana Technologies)、責任企業同盟(RBA)、ベライト・グループ(Verite Group)、ヒューマン・ライツ・イン・チャイナ(Human Rights in China)である。「中華人民共和国反外国制裁法」(2021年6月10日施行、以下「反外国制裁法」という)に基づく対抗措置は、「中国国内の組織・個人が当該団体等と関連する取引・協力その他の活動を行うことを禁止する」という1項目のみで、資産凍結や入国制限は設けられていない。義務主体は「中国国内の組織・個人」であり、文義解釈上は外資投資企業も含まれ、多国籍企業の中国現地法人やその調達・コンプライアンス担当者も義務主体となる。


「関連する取引・協力その他の活動」とは何か。『「中華人民共和国反外国制裁法」の実施に関する規定』(国務院令第803号、2025年3月23日公布施行、以下「実施規定」という)第8条では、教育、科学技術、法律サービス、環境保護、経済貿易、文化などの分野の活動が例示されている。判断の鍵は契約の有無や支払いの有無ではなく、国内主体とRBAの間に具体的な業務上の関連が生じるかどうかにある。RBAの業務に関していえば、RBAのオンラインプラットフォーム「RBAオンライン(RBA-Online)」の利用、VAP審査の申請・実施、費用の支払い、データの提出、報告書の共有などはいずれも規制対象に該当する可能性がある。一方、サプライヤーが自主的にRBA「行動規範」に沿って内部管理を整備することは、規制対象にならないと考えられる。


実施規定第13条によれば、対抗措置を遵守しなかった場合、関係部門は是正を命じるほか、政府調達・入札競争への参加の禁止または制限、関連する貨物・技術の輸出入もしくは国際サービス貿易の禁止または制限、境外からのデータ・個人情報の受領または境外への提供の禁止もしくは制限、出国・国内での滞在居留の禁止もしくは制限などの措置を講じることができる。


2. 買い手側とサプライヤーそれぞれへの影響

対抗措置の影響は主体ごとに異なる。


まず、国内サプライヤーへの影響が最も直接的である。RBA審査の申請・維持・更新ができなくなるほか、VAPへの参加、RBAオンラインの利用、関連費用の支払いも一切できなくなる。


国内サプライヤーは境外の関連会社を通じてRBAと取引を行うことはできるか。境外の関連会社は文字通りの「中国国内」の範囲外にあるものの、実質的な支配と執行の点でリスクが生じる。審査の申請、プラットフォームの操作、費用の支払いが実質的に国内の親会社の決定や国内の担当者の執行によるものであれば、国内主体がRBAとの協力に関与したと認定される可能性がある。「契約主体が境外にある」ことだけでリスクを隔離することは信頼できない。


次に、外資系買い手側への影響である。買い手自体は規制の対象外だが、中国国内での調達手配に支障が生じる。中国国内でVAPまたはRMAP審査を実施するには、国内の機関または担当者がRBAと接触する必要があり、買い手の中国現地法人が代行すれば当該法人自体が違反となる。また、国内サプライヤーにRBA会員資格やRMIコンプライアンスステータスの維持を要求しても、サプライヤーは対応不能となる。


さらに外資系買い手側には追加的な法的リスクも生じる。もし外資系買い手が「コンプライアンス誓約違反」を理由に国内サプライヤーとの契約を直接終了した場合、外国の差別的制限措置を執行または補助執行する行為に該当する可能性がある。反外国制裁法第12条は権利を侵害された当事者に損害賠償請求権を認めており、「産業チェーン・サプライチェーンの安全に関する国務院規定」(国務院令第834号)第15条は、主管部門による調査・対抗措置権を別途定めている(後述の5.参照)。


最後に、中国に実体を有しない境外グループの場合である。中国国内に拠点がなく国内の担当者も関与しない限り、RBAとの取引は通常影響を受けない。


3. RBA「行動規範」遵守条項の履行可能性

一概には言えない。鍵となるのは、当該条項を実際に履行する際にRBAと業務上の関連を生じるかどうかである。


1つ目は、サプライヤーによる内部管理、買い手への資料提出、買い手による自主検査、あるいはRBA体系から独立した機関への審査委託など、売買双方とそのサービス機関の間で完結する形で履行されるケースである。通常はRBAとの取引・協力には該当しない。


2つ目は、RBAの業務体系を通じて履行されるケースである。RBAオンラインを通じた自己評価アンケート(SAQ)の提出、VAP審査の手続き、費用の支払い、報告書の共有などがこれにあたる。この場合、国内主体はRBAと業務上の関連を形成することになり、対抗措置の規制範囲に該当する可能性が高い。


4. 既存のVAP報告書の取扱い

報告書そのものと、報告書のステータスを維持する行為を区別する必要がある。既に完了した審査行為について、対抗措置は遡及的に適用されないため、報告書を歴史記録として内部に保管するだけであればリスクは低い。


リスクが生じるのは「維持」の段階である。VAP報告書には有効期間があり、定期的な再審査が必要となる。また、責任ある鉱物調達イニシアティブ(Responsible Minerals Initiative、以下「RMI」という)のコンプライアンスステータス(RMAP適合ステータス)は動的に維持されるリストであり、サプライヤーがステータスを保持するには継続的なデータ提出、再審査の受領、施設情報の更新が求められる。RMIは2008年に設立されたRBA傘下のイニシアティブで、RMAPプログラムはRMIが管理しておりRBAとの関連性が高いことから、こうしたステータスの維持は対抗措置の規制範囲に該当しやすい。買い手がサプライヤーに報告書内容の再確認、補足、更新を要求する場合も同様である。


対外的な使用にも同様の抑制が必要である。RBAのロゴの使用を継続したり、審査ステータスが現在も有効であると対外的に喧伝したり、既に完了したVAP報告書を対外的に提出したりする行為は、指定対象団体との協力関係を継続・強化するものとみなされる可能性がある。慎重な運用としては、過去の報告書は内部保管に切り替え、「現在有効な」コンプライアンス証明として対外的に提出することをやめ、並行して代替的な証明手段を準備することが望ましい。


5. サプライチェーン・コンプライアンスに関連するその他の法規

「産業チェーン・サプライチェーンの安全に関する国務院規定」(国務院令第834号、2026年3月31日公布施行)第13条は、中国国内で産業チェーン・サプライチェーンに関連する調査その他の情報収集活動を違反して実施した場合、主管部門が法に基づき処理する旨を明記している。第15条は、外国の組織・個人が正常な市場取引原則に違反して中国の公民・組織との正常な取引を中断し、中国の公民・組織に対し差別的措置を講じ、その他の損害行為を実施した場合、主管部門は調査を行い対抗措置を講じることができると定めている。


データの境外持ち出しも並行した関門となる。労務、生産能力、サプライヤー名簿などのデータを境外に提出するには、データ出境に関する規定に適合する必要がある。また、外国の司法・執行機関の要求に応じて国内のデータを提供する行為については、「中華人民共和国データ安全法」第36条、「中華人民共和国個人情報保護法」第41条に別途禁止規定が設けられている。


結語

対抗措置の施行後も、サプライチェーンにおける責任ある管理は継続する必要がある。影響を受ける企業は、RBA関連の業務と慣行を整理して停止し対抗措置違反を回避すると同時に、代替的な審査スキームを模索し、サプライチェーン・コンプライアンスへの影響を最小限に抑えることが求められる。


本稿の執筆にあたり、刁漪茹氏に資料の検索と確認をいただきました。ここに感謝の意を表します。



本シリーズについて

「製造業法務ノート」シリーズは、製造業企業(特に中国在住の外資系企業とそのサプライヤー)が経営の中で直面する実務的な法律問題に焦点を当て、法令の規定と監督実務を整理し、問題解決の視点を提示することを目的としています。本シリーズの研究記事一覧:

1. 製造業法務ノート01:「外国の法令を遵守する」条項の中国法的検討


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