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『商事調停条例』

 2026-01-2722

近年、事件数が増加の一途をたどり、司法資源が相対的にひっ迫する状況において、多元的な紛争解決メカニズムの構築が重要な課題となっている。商事調停と人民調停は、中国における重要な非訴訟による紛争解決方式として、それぞれ独自の役割を果たしている。人民調停は「中華人民共和国人民調停法」などの法律・法規に基づき、人民調停委員会が主宰して民間紛争を扱う。一方、商事調停は商事主体(事業者)間の財産権に関する紛争を対象とし、専門性、秘密保持性、手続きの柔軟性などにおいてより高い水準を求められる。商工会議所、仲裁委員会、専門調停センターなどの専門商事調停機関が主導して組織されることが多く、独立して実施できるほか、訴訟や仲裁と連携することも可能である。これまで、商事調停業界には統一された全国的な法的規範が存在しなかった。

商事紛争解決の効率向上、企業の紛争解決コスト削減、ビジネス環境の一層の最適化を図るため、上海、粤港澳大湾区(GuangdongHong KongMacao Greater Bay Area, GBA)、海南などの自由貿易区(港)では、商事調停の専門立法に関する試験的事業とイノベーションが先行して展開され、全国的な立法に向けた重要な経験が蓄積された。しかし、商事調停業界では、機関の設置、手続規則、調停人の資格、合意の効力などの面で制度上の空白が存在していた。立法上の空白を埋め、専門的かつ国際的な商事調停制度体系を構築するため、「商事調停条例」(国務院令第827号、以下「条例」という)が20251231日に公布され、202651日より施行される。

条例は計33条からなり、中国の商事調停制度を体系的に構築しており、主な内容は以下の通りである

、商事調停の適用範囲及び基本原則

条例は主に貿易、投資、金融、運輸、不動産、建設工事、知的財産権などの典型的な商事分野における紛争に適用され、婚姻・家庭、相続、後見、労働人事、消費者権益などの紛争には適用されない(第2条)。

条例は、自発性、合法性、誠実性、秘密保持を中核原則として確立している(第14条)。手続の開始及び継続は双方の自発的合意に基づく必要があり、一方の明確な拒否がある場合は調停を行ってはならない(第15条)。当事者の同意を得て採用されるオンライン調停方式は、対面調停と同等の法的効力を有することを明記している(第18条)。これにより、地域を越えた紛争に対して効率的かつ低コストの解決ルートが提供される

、商事調停合意の効力強化と執行ルート

条例は商事調停合意に強力な執行保障を付与する。調停合意は法的拘束力を有し、当事者はこれを履行しなければならない(第22条)。国は商事調停と訴訟、仲裁、公証等の制度との連携メカニズムを整備する(第7条)。

1.司法確認

当事者は合意成立後、共同で管轄権を有する人民法院に対し調停合意の司法確認を申請できる(第23条)。裁判所が審査の結果、合意が法律の強制規定に違反せず、公共の利益及び他人の合法的権益を損なわず、かつ双方の自発的合意に基づくものである場合、裁判所は調停合意の有効性を確認する裁定を下すことができる。一方が履行を拒否または不履行の場合、相手方は裁判所に対し強制執行を申請できる。

2.仲裁確認

当事者が商事調停機関の下で調停合意に達した後、既存の仲裁合意または調停合意中の仲裁条項に基づき、仲裁機関に対し当該商事調停合意の内容に基づく裁定書の作成を申請する。

3.公証認証

給付内容を有し、債権債務関係が明確な商事調停合意については、当事者は公証機関に対し、強制執行効力を有する債権文書公証の申請を法によって行うことができる。

なお、海外執行に関わる調停合意については、条例は当事者が国際条約に基づき管轄権を有する外国主管機関に執行を申請できると規定している(第23条)。「調停による国際的な和解合意に関する国際連合条約」(シンガポール条約)に基づき、中国国内で成立した条件を満たす国際商事調停合意は、将来他の締約国において直接執行を求めることが可能となる。これは越境履行に関わる紛争の解決ルートを提供するものである

商事調停組織の越境サービス能力

条例は、商事調停組織が海外の専門家から調停員を招聘し、届出管理を実施できると規定している(第12条)。これは、日中両国の商業慣行と文化的背景に精通した日本の専門家が調停に参加する機会を得られることを意味し、コミュニケーション効率と解決案の受容性向上に寄与する。

条例は、中国の商事調停組織が海外に業務機関を設置し商事調停活動を行うことを支援すると同時に、海外の商事調停組織が自由貿易試験区や海南自由貿易港などの区域に業務機関を設置し、対外商事調停活動を行うことを認めている(第24条)。これは将来、国際的に著名な調停機関(日本の関連機関を含む)が中国でサービスを提供するための制度的可能性を提供するものである。企業は中国国内で調停サービスを選択できるだけでなく、将来的には慣れ親しんだ日本の調停機関の中国支社に一部の紛争処理を直接に依頼することも可能となる。これにより国際商事紛争解決における文化的障壁が低減される。

さらに条例は、粤港澳大湾区の規則連携を支援し(第26条)、調停人の資格の国際的相互承認を推進(第25条)し、中国商事調停の国際競争力を多角的に高める

おわりに

条例は企業に対し、より効率的で柔軟な商事紛争解決ルートを提供している。特に司法確認、仲裁確認、および「シンガポール条約」との連携など多様なルートを通じて、調停合意の執行力と越境執行の課題を効果的に解決した。日本企業は、条例施行後に省級司法行政部門が公表する調停機関名簿及び関連規則に注目することを推奨する。重要な商業契約を起草する際には、調停前置条項の設計を検討できる。紛争発生時には、商事調停を第一選択肢または並行の解決手段として積極的に評価し、その手続きの柔軟性と訴訟・仲裁を上回る効率性を最大限活用することで、自社の権益と商業協力関係を維持することが望ましい

 


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