広東省における育児・介護休暇のコンプライアンスポイントを一挙解説
2023年1月11日、広東省人力資源と社会保障庁、広東省衛生健康委員会は共同で「『広東省人口と計画生育条例』における休暇の実施状況のさらなる改善に関する通知」(以下、「計画生育条例実施通知」という)を発表。広東省政府の関連管理当局は「通知」という形式により「広東省人口と計画生育条例」(以下「計画生育条例」という)改正後の休暇制度について、詳しい説明と具体的な実施ガイドラインを示しました。使用者は、「育児休暇」と「介護休暇」の概念を理解した上で、通知における具体的な要求に従って企業の関連規定を策定、又は改正し、関連する休暇の要求をよりよく実施し、従業員の休暇管理を根拠に基づいて、より明確に行う必要があります。
(一)広東省における育児休暇や介護休暇の対象者は?
・育児休暇の戸籍条件:①広東省の行政区域に居住する中国国民、又は②戸籍が広東省にあり、省外に居住する中国国民。
・介護休暇の戸籍条件:両親ともに広東省戸籍、または両親のうちの一人が広東省戸籍を持つ場合、その子供は介護休暇を享受する。両親ともに他省の戸籍を持つが、子供が広東省で働いている場合、使用者は条例を参照して介護休暇を与えることを推奨する。
・育児休暇の取得条件:①子供が合法的に生まれ、且つ②子供が3歳未満。
・介護休暇の取得条件:両親のうちの一人が満60歳以上の一人っ子。
(二)休暇日数はどのように計算するのか?
・子供が3歳になるまで、夫婦は毎年それぞれ10日間の育児休暇を取得できる。両親の一方または両方とも60歳に達した一人っ子は、毎年5日間の介護休暇を取得できる。一人っ子の両親が病気のために入院した場合、年間累計15日を超えない範囲で介護休暇を取得できる。
・育児休暇と介護休暇は重複して計算ができず、3歳未満の子供が複数いる場合、一番下の子供が3歳になるまで、夫婦双方はそれぞれ年間10日間のみの育児休暇を取得できる。
・育児休暇の計算周期:育児休暇は、暦法上の年ではなく、子供の誕生日を起算日として計算する。
・介護休暇の計算周期:自然年を基準として計算する。
(三)休暇はどのように調整されるのか?
・育児休暇と介護休暇は、同一年度内で分割利用が可能であるが、原則としては2回までとする。
・育児休暇と介護休暇は、会社の生産・経営上の必要性に基づき、翌年に繰り越すことも可能で、従業員との合意が必要となる。
・育児休暇と介護休暇は、従業員の年次有給休暇の一部としてカウントされない。
(四)賃金はどのように支払われるのか?
・育児休暇と介護休暇中の賃金支払いの下限:本地区の最低賃金基準を下回らないこと。
・使用者に対する育児・介護休暇中の賃金支払いに関する管理要求:明確な規定整備+従業員との協議によって決定し、奨励休暇や看護休暇中の賃金基準を参考にした賃金の支払いを推奨する。
・本地域の最低賃金基準は、育児・介護休暇中の賃金について法律で定められた最低限であり、使用者がその基準に従って育児・介護休暇中の賃金を直接支払うことができるというわけではない。使用者は雇用管理規則において育児・介護休暇中の賃金待遇を明確にすることができるが、地方最低賃金基準を下回ってはならない。また当該雇用管理規則の作成・改正について、合法性や手続き上の法的要件を満たす必要がある。同時に、従業員との団体交渉および団体労働契約の締結を通じて、育児・介護休暇中の賃金基準を明確に取り決めることができる。
(五)使用者はどのように管理するのか?
・育児休暇と介護休暇を申請する際に、証明資料を提出しなければならないよう会社規則で定めることができる。例えば、「広東省生育登録証明書」、子供の「出生医学証明書」、満60歳の両親の身分証明書情報など。
・申請書類の簡素化を推奨し、従業員が休暇条件を満たした誓約書を提出する方式で、従業員の休暇申請を受け付ける。
・使用者は生産、経営の具体的状況に従い、又は従業員本人の希望を考慮し、合理的に休暇を手配することができる。
(六)使用者が育児休暇や介護休暇の規定に違反した場合の法的リスク※1について
・広東省の現行規定および「計画生育条例実施通知」の内容により、従業員が育児休暇や介護休暇の取得条件を満たし、且つ育児休暇や介護休暇を申請したにも関わらず、使用者が規定に従って育児休暇や介護休暇を手配しない場合、従業員は関連部門に報告することができると規定され、関連部門の調査により、事実である場合、是正を命じられる。
(七)育児休暇と介護休暇の「代休」※2について
・代休を取得できる対象者:末子が2021年12月1日(広東省「計画生育条例」の改正日)から2023年1月11日までの間に3歳に達し、且つ使用者が業務上の原因により育児休暇を手配していなかった場合。一人っ子の両親の一方が2021年12月1日から2023年1月11日の間に60歳に達し、使用者が2021年、または2022年に業務上の原因で介護休暇を手配していなかった場合。
・代休の手続き:従業員は代休を申請する必要があり、会社に関連制度規定がある場合、その規定に従って、代休の条件を満たしている証明資料を提出する必要がある。
・具体例:2020年1月15日に子供が生まれた従業員は、2020年1月16日から2021年1月15日まで、即ち従業員の子供が1歳になるまでの期間には、「計画生育条例」がまだ育児休暇に関して改正されていないため、従業員は育児休暇の代休を申請することができない。2021年1月16日から2022年1月15日まで、即ち従業員の子供が2歳になるまでは、2021年12月1日時点で従業員の子供が3歳未満であるため、使用者が育児休暇を手配していない場合、従業員は代休を申請することができる。又2022年1月16日から2023年1月15日まで、従業員の子供が3歳になる前に、従業員は育児休暇を申請することができ、使用者が手配していない場合、休暇の条件を満たす従業員は代休を申請することができる。
終わりに
以上の通り、使用者はできるだけ早めに育児・介護休暇の申請基準(申請条件、申請資料及び日数等を含むが、これらに限らない)、許可権限、賃金福利待遇等の問題につき、関連規則制度を制定又は完備することをご提案いたします。関連規則制度の制定又は改正は民主手続きを踏まなければならず、従業員全員に公示送達を行った上、従業員の受領確認を取得しておく必要があります。
従業員は育児・介護休暇の申請基準を満たすか、いつ頃になったら申請できるかについて、使用者内部で従業員の家庭状況を調査、確認することをお勧めします。同時に、新入社員に対し、家庭状況調査表の記入、個人承諾等の方法により、入社前に既に育児・介護休暇を享受したか否かを把握することができます。
※1 使用者が未完了の育児休暇や介護休暇に対して、給与補償しなければならないという規定はない。また、「計画生育条例実施通知」の意見により、特定条件を満たした従業員が育児・介護休暇を取得できなかった場合、使用者に代休を申請することができる。
※2 2021年12月1日、広東省は「計画生育条例」を改正し、「育児休暇」と一人っ子の介護休暇に関する規定を盛り込んだ。詳細な規定はまだないが、その日以降、企業は対象従業員の育児休暇と介護休暇を手配する義務があり、また、2023年1月11日、広東省は改正後の「計画生育条例」の実施に向けて、育児休暇と介護休暇の手配方法などの詳細規定にあたる「実施通知」を発行した。ここで、人事社会福祉部は、「計画生育条例」の改正後、或いは規則導入前に育児・介護休暇の手配をしていない企業があることを考慮し、2021年12月1日から、休暇条件を満たしている限り、使用者は従業員の育児休暇を手配する義務があり、手配しない場合、従業員は代休を申請する権利があると具体的に定めている。