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商標法(2026年改正)

 2026-07-304

近年、中国の商標分野では、悪意による先取り出願や商標の悪意的大量取得といった問題が見られ、商標の実際の使用率は低水準にとどまっている。2026年6月26日、全国人民代表大会常務委員会は、新たに改正された「中華人民共和国商標法(2026年改正)」(以下、「改正法」という)を可決した。これは「商標法」施行以来初の全面改正であり、条文は73条から87条に拡充され、2027年1月1日から施行される。同法の主な改正点は以下の通りである。

 

一、悪意ある出願の規制と行政処分

改正法では、使用を目的とせず、かつ通常の生産・経営上の必要性を明らかに超える商標登録出願については、登録を認めないことが明確にされた(第19条)。悪意のある出願が悪影響を及ぼした場合は、10万元以下の罰金が科される可能性がある(第54条)。

商標登録の際、確かに区分を越えた保護が必要な商標(例えば、事業の多角化やブランドコラボレーションなどのケース)については、出願前に、当該区分と既存又は将来の事業との間に真の関連性があることを説明できる商業上の理由を準備しておくことを推奨する。

 

二、商標使用の強化

1. 商標の不適切な使用

改正法では、商標の不適切な使用に対して新たな行政処分が設けられた。商標を使用する際に登録内容を変更し、かつ是正を拒否した場合は、5万元以下の罰金が科される。情状が重い場合は、登録商標が取り消される(第57条第1項)。日本企業にとっては、登録人の氏名や住所の変更などがあった際、同時に商標の変更手続きを行う必要がある

2. 3年連続の商標不使用

商標の実際の使用に関して、登録商標を3年連続して使用しない場合、第三者はその取消しを申請できる。改正法では、商標主管部門が職権に基づき自主的に取消しを行う権限も新設された(第57条第3項)。これは、防護標章(企業が先取り出願を防ぐために登録した予備的な商標)であっても、第三者が取消しを申請する場合だけでなく、主管部門の職権による取消しの対象となる可能性がある。

このため、多数の防護標章を保有する日本企業は、直ちに以下の措置を講じることを推奨する。

l 中国における商標ポートフォリオを全面的に点検し、3年間使用されていない、又はまもなく3年が経過する商標を特定する

l 各防護標章の維持必要性を評価し、維持価値のない商標については自主的な処理を検討する

l 維持価値のある商標については、実態のある商業的使用を行い、販売契約、請求書、広告宣伝、ライセンス契約などの使用証拠を保存する

 

三、商標ライセンスにおける品質保証義務と解除権

改正法では、ライセンシーが品質保証義務を履行しない場合、ライセンサーはライセンス契約を解除する権利を有すると規定されている(第55条)。同時に、ライセンサーにはライセンシーの使用行為を監督する義務がある。

品質保証義務を明確にするため、ライセンサー・ライセンシーを問わず、契約において品質基準の客観的な判断根拠及び対応方法を明記することが推奨される。例えば、性能パラメータ、外観要件、適用される国家基準、品質管理メカニズム、ライセンサーの検査権、ライセンシーの定期報告義務、不合格品の認定基準と処理方法、及び品質問題について書面による是正勧告後も是正されない場合の契約解除権などである。

 

四、著名商標保護制度の整備

改正法は著名商標の保護制度について多くの整備を行い、主に以下の側面を含む

l 保護範囲の拡大:未登録の著名商標も区分を超えた保護を受けることができる(第21条)。これは、たとえ日本企業が中国で特定の商標をまだ登録していなくても、当該商標が関連公衆の間で高い知名度を有することを証明できれば、同様に区分を超えた保護を主張できることを意味する。

l 法的性質の明確化:改正法では「認定(行政による権利付与の性質を有する)」を「確認(事実の調査の性質のみを有する)」に変更し、著名商標が行政による栄誉称号の授与ではなく、客観的事実の調査であることを明確にした(第63条)。この変更は、過去の実務において存在した認定のハードルを下げ、著名商標の保護を制度本来の趣旨に回帰させるのに役立つ。

l 確認要素の拡大:著名性を確認する際には、認知度、使用状況、宣伝状況、保護の経緯などの要素を考慮すべきである。確認要素は、従来著名商標として保護されていた記録に限定されず、商標権侵害訴訟における勝訴判決、異議申立てや無効宣告の裁定、行政処分決定、及び税関による保護記録なども参考の根拠となり得る(第63条)。

l 海外向け確認制度の追加:商標主管部門は、請求に応じて当該商標が中国国内で著名であることを証明する証明書を発行できる。これは、日本企業が母国やその他の国で商標登録や権利行使を行う際に利用でき(第69条)、中国で長年事業を展開している日本企業のブランドにとって直接的な価値を持つ。

l 適用対象事件の範囲拡大:商標事件に加え、現在では不正競争事件においても著名性の確認を請求できるようになった(第63条)。これにより、救済のルートが広がった。

日本企業は、ブランド知名度の証拠ファイルを整備し、業界ランキングや市場シェア報告書、メディア報道や広告掲載記録、受賞歴や消費者認知度調査、販売データや販売ネットのカバー状況など、ブランドの知名度を証明できる資料を長期的かつ体系的に収集することが推奨される。権利侵害行為を発見した際には、著名商標の確認請求を含む侵害訴訟を提起すべきかどうかを評価することができる。

 

五、自主的な抹消登録と隔離期間規則の調整

改正法は、商標消滅後の隔離期間制度について調整を行った。商標権者が自主的に商標の抹消登録をした場合、抹消後1年間は、同一又は類似の商標の出願は許可されない(第49条)。その他の場合(商標が取り消された、無効と宣告された、又は期限満了により更新されなかった)には、1年間の隔離期間は適用されず、第三者は直ちに同一又は類似の商標の登録を出願することができる。

商標ポートフォリオを縮小したり、不要となった商標を放棄したりする際は、自主的な抹消登録を優先して行うことを推奨する。その理由は、自主的な抹消登録を選択することで1年間の隔離期間を維持でき、第三者による直後の先取り出願を防ぐことができるからである。一方、期限満了による更新しない場合は、先取り出願される可能性がある。

 

六、異議申立期間の短縮

改正法では、商標の異議申立期間が3ヶ月から2ヶ月に短縮された(公告の日から起算)。先権利者(商標権者及びその利害関係人)は2ヶ月以内に異議を申し立てなければならない。期限を過ぎても申し立てがない場合、公告期間満了後に商標は直接登録が認められる(第36条)。なお、異議申立期間を徒過した場合の登録後の救済手段としては、無効宣告手続きを利用せざるを得ず、その手続きはより複雑で、時間がかかり、成功率も低い。

現在公告期間中の商標を直ちに審査し、異議を申し立てる必要のある先権があるかどうかを確認することを推奨する。同時に、商標モニタリング体制を整備し、関連する社内規程における3ヶ月の異議申立期間を2ヶ月に修正する必要がある。

 

七、結び

中国の商標制度は、登録への重視から使用への重視へと移行しつつある。日本企業にとっては、自社ブランドを保護する手段が増えた一方で、防衛的登録の管理コストは上昇しており、社内での対応スピードも高める必要がある。日本企業は、速やかに社内規程を更新し、保有する商標を全面的に棚卸しするとともに、積極的に商標のモニタリングと証拠の保存を行うことが推奨される。


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