「外国籍個人の株の配当・利益配当に係る個人所得税政策に関する事項についての公告」
1994年以降、「個人所得税に関する若干の政策問題についての財政部・国家税務総局の通知」(財税字〔1994〕20号)に基づき、外国籍個人による外資系企業からの配当金については、外資誘致を目的として、個人所得税の徴収が一時的に免除された。しかし、実施にあたって、一部の国内投資家が国籍の変更や、国内資本企業を外資系企業へ組織変更するなどの手段を通じて、この免税政策を悪用し、配当の免税による利益を不当に得ていたため、国内の個人株主と外国籍株主の間で税務上フェアでない状況が生じていた。2013年に国務院は当該優遇措置の廃止を提唱したが、2026年9月1日になってようやく、財政部・国家税務総局が「外国籍個人の株の配当・利益配当に係る個人所得税政策に関する事項についての公告」(財政部・国家税務総局公告2026年第27号、同日施行、以下「公告」という)を公布し、当該優遇措置を正式に廃止した。公告は計3条からなり、具体的な内容は以下の通りである。
一、免税を廃止し、一律20%の税率を適用
公告第1条では、外国人が外商投資企業から得る配当所得に対し、20%の税率で個人所得税を納付すると規定している。従来の免税措置は廃止され、外国籍個人株主の配当に対する税率は国内の個人株主と完全に同一となった。外国籍個人株主にとっては、配当金受取時の手取り額が減少することになる。投資企業にとっては、税引き後の配当額を算出する際に20%を差し引く必要があるだけであり、企業自身の税負担には影響しない。
二、源泉徴収及び自主申告の義務を明確化
公告第2条では、企業が外国籍個人に配当金を支払う際、税金を源泉徴収し、支払いの翌月15日までに申告しなければならないと規定している。企業が源泉徴収を行わなかった場合、個人は翌年6月30日までに自ら申告するか、税務機関の通知する期限までに納付しなければならない。これは、中国国内の日系企業が配当時に源泉徴収義務を履行し、源泉徴収を財務・支払プロセスに組み込み、申告期限に注意を払う必要があることを意味する。
三、施行日と旧規定の廃止
公告第3条の規定により、本公告は2026年9月1日から施行され、 財税字〔1994〕20号第2条第(八)項は同時に廃止される。当該日以前に企業の帳簿上で形成された未分配利益について、当該日以降に外国籍個人株主に分配される場合、納税義務は実際の支払時点に発生するという規則に基づき、新規定を適用して20%の税率で個人所得税を納付する。本公告には移行期間が設けられておらず、扱いは配当の実際の支払時期によって判断され、利益の形成年度を区分基準とはしない。
四、日本国籍の個人株主への影響
公告に基づき、日本国籍の個人株主は中国で20%の個人所得税を納付しなければならない。日本は全世界課税制度(日本「所得税法」第7条)を採用しており、日本の税務居住者は全世界の所得について日本で申告・納税する必要がある。日本「所得税法」第95条に基づき、中国で配当に係る個人所得税を納付した場合、日本の確定申告時に外国税額控除の適用を申請できる。控除額は日本における控除限度額の制約を受け、控除の手続きには中国の納税証明書等の資料の提出が必要である。
また、「日中租税条約」第10条第2項では、受取人が当該配当の受益者である場合、中国は源泉国として当該配当に対して、配当総額の10%を超えて課税してはならないと規定されている※。「租税条約における『受益所有者』に関する問題についての国家税務総局の公告」(国家税務総局公告2018年第9号)第4条第(三)項に基づき、締約国の居住者である個人は、直接「受益所有者」の地位を有するとみなされる。これに基づき、日本国籍の個人株主は日本の居住者であるため、配当の受益所有者に直接該当すると認定され、10%の条約税率が適用される。条約上の優遇措置は、自ら申告して初めて適用されるものであり、自動的に適用されるものではない。具体的な手続きについては、専門の税務顧問に相談することを推奨する。
※「日中租税条約」第10条第4項には例外規定があり、配当の源泉となる株式が、当該日本人個人の中国国内における恒久的施設又は独立した個人労務の固定拠点と実質的な関連性がある場合、前述の10%の配当制限税率は適用されない。一般的な個人の財務投資による株式保有のケースでは、通常この状況には該当しない。






