「情報ネットワーク犯罪活動支援等の刑事事件の処理における問題に関する意見」
最高人民法院、最高人民検察院、公安部は、2025年7月22日に共同で、『情報ネットワーク犯罪活動支援等の刑事事件の処理における問題に関する意見』(以下「意見」という)を公布して施行した。「意見」は、2019年10月21日から施行されている「最高人民法院 最高人民検察院 公安部による情報ネットワークの不法利用、情報ネットワーク犯罪活動援助等の刑事事件の処理における法律適用に関する若干の問題の解釈」(法釈〔2019〕15号、以下「解釈」という)の規定を明確にした規定である。「意見」は全16条から構成され、主な内容は以下の通りである。
一、「知る」の認定基準
「解釈」第11条には、「監督部門から告知された後も依然として関連行為を実施する」、「明らかに異常な価格で取引を行う」など「知る」と認定できる6種の情形を規定されている。「解釈」をもとに、以下の「知る」と認定できる3種の新たな情形を「意見」に追加した。
■携帯電話SIMカードの一括挿入装置を不法提供したり、主発信者番号の変更、仮想ダイヤル、インターネット電話の公衆通信網への違法接続等機能を有する設備やソフトウェアを不法提供したり、バッチアカウント、ネットワークアドレス自動切替システム、SMS認証や音声認証を一括受信・提供するプラットフォームを不法提供したりする場合
■詐欺関連等の異常な情形を理由に金融機関、通信事業者又はインターネットサービス提供者により、サービスの制限若しくは利用停止などの措置を講じられた後も、関連行為を実施する場合
■調査対応を目的とした応答話術を事前に準備する場合
二、国内直接投資の形態
「解釈」第12条には、「情状が重い」との認定について、「3つ以上の対象に対して援助を提供した場合」や「支払決済金額が20万元以上に達した場合」など複数の情形が列挙されている。一方、「意見」には、「二つのカード」(銀行口座と携帯電話SIMカード)という犯罪の源から、「情状が重い」との認定基準を補充及び細分化されている。
■本人の銀行口座若しくは決済用口座を3つ以上売却又は貸与し、かつ、当該口座への資金振込額が30万元以上に達した場合
■本人以外の銀行口座、決済用口座若しくは法人の銀行口座、決済用口座を購入、売却又は貸与し、かつ、当該口座への資金振込額が30万元以上に達した場合
■携帯電話SIMカード、IoTカードを20枚以上購入、売却又は貸与した場合
三、「厳罰化」認定基準の比較分析
「意見」を公布する前に、情報ネットワーク犯罪活動援助に対する厳罰化は、主として法律の一般原則と個別案件の情状に根拠して行われていた。「意見」には、厳格な処罰を適用すべき8種の情状を初めて明確に列挙され、司法実務に明確な指針を提供した。
■他人の銀行口座と決済用口座、法人の銀行口座と決済用口座、携帯電話SIMカード、IoTカード、インターネットアカウント等の購入又は販売を行う不法活動を組織し又は長期的に行った場合
■未成年者、在学中の学生、高齢者、障害者等の群体を組織し又は利用して犯罪を実行させた場合
■通信、金融、インターネット等の業界の従業員が、その職務上、又はサービスの提供に伴う便宜を利用して犯罪を実行した場合
■越境して技術的サポート又は援助を不法提供した場合
■情報ネットワーク犯罪活動に特化し又は主に同犯罪に利用される技術、ソフトウェア又は設備を提供した場合
■「ディープシンセシス」などといった人工知能技術を利用して犯罪を実行した場合、
■過去二年以内に、情報ネットワーク犯罪活動援助、犯罪所得又はその収益の隠匿等の行為により、行政処分を受けたことがある場合
■過去五年以内に、情報ネットワーク犯罪活動援助、犯罪所得又はその収益の隠匿等の行為により、有罪の判決を受けた又は相対的不起訴の処分を受けた場合